着任式の挨拶(教育委員長)文例/例文

教育委員長の○○でございます。

本年度、○○においでくださった先生方、また、○○の学校で新たに教師になられた先生方、ようこそ○○にお越しくださいました。心より歓迎いたします。

個人的なお話になりますが、私は田舎の公立中学校を卒業いたしました。その3年間、なんとずっと同じ担任の先生でした。定年間際のおばあちゃん先生で、「○○」というお名前でしたので、口の悪い私たちは「水ばあ」と呼んでいました。3年生になったとき、またしても「○○」が担任だということが分かりまして、陰で友だちと文句を言っていたことを思い出します。

あるとき、クラスで、何かの行事の出し物について話し合ったことがありました。みんな勝手な意見を言うばかりでなかなかまとまらず、時間ばかり過ぎていきました。みんな、いらいらしていました。私もいらいらして、後ろに座っていた「水ばあ」に、「もういい加減にしてほしいよ」と言いました。

すると、「○○」こと水谷先生は、涼しい顔をして「民主主義には時間がかかるものです」と言いました。「民主主義には時間がかかる」。その言葉は、そのときはあまり胸に響きませんでしたが、不思議なことにずっと私の心に残りました。

そして、大学進学を前に、私は水谷先生のおっしゃった民主主義というものについてもう少し考えてみたいと思うようになり、政治学の道を選択することになりました。その後、初心を忘れて弁護士なぞになってしまいましたが、今でも水谷先生の言葉がずっと胸に残っています。

皆さんが教室で発する何気ない言葉が、子どもたちの人生に大きく影響するかもしれないということを、どうぞ心の片隅にでも覚えておいていただければと思います。

皆さんは、多くの場合、小さなクラスを任されます。「小さな」というのは、30人学級か、40人学級かということではありません。○○市の子ども全体、あるいは日本の子ども全体から見て、とても小さな集団だという意味です。その小さなクラスには優秀な子どももいるでしょうし、問題を起こす子どももいるかもしれません。元気が過ぎてうるさすぎるクラスもあれば、おとなしくて覇気に欠けるクラスもあるかもしれません。いずれにしても、皆さんは、小さなクラスを任されることになります。

皆さんは、その小さなクラスで全力を尽くしていただきたい。その小さなクラスを、知恵を絞って、工夫を凝らして、周囲の力を借りて、ねばって、こだわって、少しでもよくしていただきたい。それこそが全体をよくする道ですし、全体をよくするにはそれ以外の道はないからです。

小さなクラスに全力投球をする。それが皆さんの使命です。ぜひ存分に力を発揮していただくことを期待しております。